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Interview ラボの人々

アクティブセンサで
より安全でロバストなモビリティを実現する

研究開発グループ
シニアリサーチャ

2012年入社

石川 康太

研究開発グループ

2020年入社

長田 惇

信号の性質がわかっているからロジカルに設計できる

石川

自動車には多くのセンサがついていますが、信号処理のクラスタでは、レーダー、ソナー、LiDARなどの、電磁波や音波などの反射や散乱を利用して対象物の位置や速度、物理特性などを測定するアクティブセンサの信号処理を扱っています。信号処理といっても、生の信号から位置や速度を推定する低レベル処理から、推定した情報を集めて人や車といった具体的な対象物の状態を認識する高レベルな処理までありますが、その両方を対象にしています。最近はどの段階の処理にも、機械学習が利用されています。

アクティブセンサの特長は、既知の信号を送信することができるため高いS/N比が得られることです。単純に高いS/N比が得られるというだけでなく、送信する信号を様々に工夫することで、ToF (Time of Flight) から距離を測定したり、ドップラー効果に基づいて速度を直接測定するなど、カメラのようなパッシブセンサでは得られない情報をダイレクトに得ることができます。センサ本体はハードウェアなのでデンソー本社で開発しますが、信号処理アルゴリズムそのものに限らず、信号処理の観点から必要な送受信方式の設計を考えることもあります。

長田

私はアクティブセンサの中でもミリ波レーダーを使った環境認識アルゴリズムの開発をしています。処理としてはどちらかといえば後段で、点群データをニューラルネットワークで処理して物体を検出する手法を研究しています。入社前はイベントカメラ(→コンピュータビジョン)の研究をしていたのですが、時系列の点群データを扱うという点では共通しているけれども全然違うテーマが面白そうだと感じてこの分野に興味を持ちました。

画像認識だと多くの研究者がいて、もうデータ量で勝負が決まる世界になりつつありますが、ミリ波レーダーのディープラーニングはまだそこまで研究が進んでいません。その中で、やはりレーダーなので、速度が測れるとか、レーダーならではの長所を手法に活かして方法を考えていくところが面白いと思っています。

石川

私は逆に、後段処理よりも低レベル処理を扱うことが多いです。アクティブセンサの場合、信号の性質がわかっていることが前提になるので、どんな状況でどんな観測ができるのか、推定精度がどのくらい出るのかといったことが物理的なモデルから求められ、センサそのものの設計が非常にロジカルにできます。工学エンジニアリングとしては非常にゴールデンスタンダードで、あるべき姿の一つだと思いますし、物理学の理論との関連で議論できるのが面白いところだと思います。

計測する技術に無数の応用分野を作れる面白さ

長田

アクティブセンサは自動車のセンサとしては以前から使われています。例えば駐車場でぶつかりそうになったら警告を出すのはソナーで距離を測っているし、衝突安全装置はもっと長い距離をレーダーで測って衝突しそうになったらブレーキをかけてくれる。自動車にはさまざまなセンサが大量についていて、それらを駆使して安全運転支援の技術が実現されています。

カメラオンリーで自動運転を実現しようとするアプローチもあります。もちろんできる可能性はありますが、より安全にロバストにと考えるとアクティブセンサは依然として重要です。カメラの場合、真っ暗なところでは感度が高くないと何も映りませんが、自ら信号を発射するアクティブセンサは明るさに関係なく情報を得られます。複数のアンテナを並べて分解能をあげたイメージングレーダーであれば、カメラのように解像度の高い画像を見ることができます。自動車には夜間走行がありますから、暗さに弱いカメラをアクティブセンサで補完するのは自動運転の重要な要素技術です。

石川

一般論として、センサは何かを「計測する」技術です。ものづくりには計測はつきものですし、測った結果を見てやりたいことができているのか、できていないとすれば何が悪かったのかを考え、改善することが必須だと思っています。その意味では信号処理の応用範囲は無数にあります。例えば「車の中に赤ちゃんが取り残されていたら警告する」という機能を実現するには、まず車内に赤ちゃんがいる時に起こっていることをよく観察して理解します。呼吸だったり、温度だったり、いくつかのシグナルがあるはずで、ノイズや外乱のある中からそれを取り出すことが可能かどうかを考え、そのアルゴリズムを作ります。

車の機能開発だけでなく、工場にも「測る」課題はたくさんあります。車の場合、新機能は4-5年周期でまとめてリリースされるので、製品実装までは少し時間がかかりますが、工場の場合はもっと早いスパンで研究成果が実装されることもあります。

現場の課題解決と汎用性の高い要素技術の両方が研究できる

長田

ITLABのいいところは、製品に近いところで研究できるところ。車の部品メーカーなので、自分の研究成果が車に搭載されるかもしれないという楽しさもありますし、メーカーならではの現場の課題を解決するための研究ができる。一方で、応用範囲の広そうな、汎用性の高い要素技術についても研究して論文が書ける。自分がやろうと思えばその両方ができます。

今やっているミリ波レーダーの研究は製品に非常に近いところなので、計算量などの現実的な課題をクリアして、製品に搭載するところまでデンソーの開発者と協力してやりきりたいと思っています。

石川

私が今取り組みたいと思っていることは、より高次のレベルでセンサの性能評価ができるモデルを組み立てることです。距離の検知などの低レベルな処理であれば、物理的なモデルでセンサの性能を評価できます。例えばレーダーの場合は、距離の分解能や速度の推定精度の要求が決まれば、物理的なモデルでアンテナの数や、感度や、電磁波の強さなど必要なハードウェアのスペックが決まります。でも自動運転のためにパターン認識に必要な性能が決められたとしても、タスクが複雑で、結局ハードウェアの必要スペックを理論で決めることは容易ではありません。その間のギャップ、ニューラルネットワークを利用したパターン認識のような揺らぎのある世界と古典的な信号処理の世界の間を埋めるような理屈を作りたいです。

ITLABのいいところは、デンソーが実際にものづくりをしている会社なので、モノに結びついた課題が山ほどあって、さまざまな技術が応用できて、研究テーマもたくさんあることです。世の中のパブリックなデータセットになっていないデータも扱えます。まだ世の中に見えていない問題を解くことが必要で、そういうものに興味がある人には楽しいと思います。

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