デンソーアイティーラボラトリ(以下、ITラボ)はデンソーが設立したラボであり、研究に関する独立性と自由度を保ちながら、研究成果を本社にフィードバックすることが最大の役割です。では、その研究はどのように進められているのか。シニアリサーチャの鈴木さんに伺いました。
Interview ラボの人々
研究開発グループ
シニアリサーチャ
2002年入社
デンソーアイティーラボラトリ(以下、ITラボ)はデンソーが設立したラボであり、研究に関する独立性と自由度を保ちながら、研究成果を本社にフィードバックすることが最大の役割です。では、その研究はどのように進められているのか。シニアリサーチャの鈴木さんに伺いました。
今、私が取り組んでいる研究テーマは、自動運転で活用される車外環境の認識技術です。具体的には、ミリ波レーダーを活用した車両周囲の状況を検知するアクティブセンシングで、現在は、検出対象の形や大きさを判別し、自車の周りにあるのは車両なのか歩行者なのかを把握することができるようになってきています。
車外環境のセンシングに関しては、20数年の蓄積があることから、デンソーから直接、私に相談や要望が寄せられることも多いです。ただし、研究テーマを強制されることは全くありません。私自身がテーマを選ぶこともあります。ひとつ言えるのは、デンソーとITラボは「モビリティの発展」という最終的な目標を共有していることから、研究テーマは目標に即したものが選ばれている、ということです。
具体的に研究を進めていくにあたり、まず本社の開発部門の方々から、今後進めていきたい開発についての要望、あるいは現在起こっている問題に関する相談を伺います。その際、問題点が漠然としていたり、整理されていなかったりすることがあります。
そこで、私たちが初めに取り組むのが「課題設定」です。これからやってみようとしていることは、本当に課題解決につながるのだろうか。この点を最初に立ち止まって熟考することが重要です。本質的な課題は何か、何を研究すべきなのか。双方が納得できる課題に辿り着くまで対話を重ねて、本社の方々と私たちの互いのギャップを埋めていきます。
解決に必要なのは、最先端技術だとは限りません。「最先端であること」が目的になってしまうのは危険です。例えば、機械学習に関する論文をそのまま現実に落とし込もうとしても、おそらくうまく行かないでしょう。無理に機械学習を導入するよりも、既存技術が現実の課題解決に有効である可能性の方が高いかもしれない。ですから、私たちは最先端であることに捉われず、広い視野からどの技術が実効的・効果的なのかを判断したいと考えます。そして、そのために課題設定を行います。
私たちが提供した研究成果は、さまざまな技術となり、多彩な車種に適用され、人に対するクルマの安全性を高めていきます。こういう形で技術の社会実装に貢献できていることに、やりがいを感じます。日頃の研究成果をフィードバックする場は、論文発表やデンソー本社での展示会などありますが、私は、依頼を持ちかけてくれた本社部署の方々へのプレゼンテーションをフィードバックの場として最も重視しています。やはり、依頼が来れば、できるかぎり応えたいですし、現場から一言、ありがとうと言われると、うれしいものです。
私は大学卒業後、大手SIerに就職し、Webプログラミングの仕事をしていました。ところが与えられた作業をこなすだけの日々に物足りなさを感じ、大学院時代のように研究職を志して、ITラボに入社しました。当時は、工程の最初から最後まで、きちんと考える仕事がしたいと考えていました。今、研究に先立って、課題設定を大切にしているのも入社時の思いを忘れないためです。このITラボには、自分が納得いくまで研究できる環境があります。ただ、研究だけで終わってしまうのはもったいない。社会実装のゴールまで走っていける方をお待ちしています。