ITLABでの研究活動において、とてもユニークな点がひとつあります。それが「研究クラスタ」と呼ばれる、研究のグループ単位です。クラスタをベースとした研究は、どのように進められるのか。石川さんに、お話を伺いました。
Interview ラボの人々
ITLABでの研究活動において、とてもユニークな点がひとつあります。それが「研究クラスタ」と呼ばれる、研究のグループ単位です。クラスタをベースとした研究は、どのように進められるのか。石川さんに、お話を伺いました。
ITLABのほとんどの社員が、研究者で、その運営にはフラットな構造のティール型組織を採用しています。普通の会社組織のような階層構造はなく、研究開発グループという大きな単位があるだけで、部門を細かく分けていません。代わりに、各研究者は「研究クラスタ」と呼ぶ研究のグループに加入し、さまざまな研究に取り組んでいます。研究クラスタは誰でもいつでも自由に立ち上げることができますし、複数のクラスタに所属することもできます。私自身、3つのクラスタに入っています。
クラスタ発足にあたってはA4 1枚程度の「クラスタビジョン」という企画書を制作し、社内でプレゼンテーションを行い、そこで承認される必要があります。ビジョンには「具体的な事業課題」「取り組む内容と目標の水準」「そのための技術研究の方針」という3つの内容が盛り込まれます。要は「研究によって誰がどれほどうれしくなれるのか」を端的に表現し、研究の意義や効果を委員会が認めなくては承認されません。やりたい研究が何でもできる、というわけではないんですね。
自動車業界の未来を見通して、「今始めるべきビジョン」、「喫緊の課題を解決するためのビジョン」など、いろいろな方向性が考えられます。自分の純粋な興味を発端にするよりは、企業や業界を見渡して拾いあげた課題をクラスタ化し、解決を目指しているケースが多いかもしれません。内容が妥当であれば、即決でクラスタ発足が決まります。このスピード感は、ITLABならではだと思います。
研究クラスタは、発足したリーダー、自分なりの研究テーマを持って参加するメンバー、協力者として参加するオブザーバなどから構成されます。研究テーマの進捗や状況を可視化する仕組みは整備されていますが、クラスタの運営方法はリーダーによってそれぞれ違います。ITLABには管理職が存在しないので、研究活動のすべてをクラスタの責任において進めてください、ということです。
研究を進めるにあたっては、日常的なディスカッションが重要な役割を果たしていますが、そのやり方もクラスタによって異なります。ミーティングの場所を確保してスケジューラに予定を入れるスタイルもあれば、突発的に立ち話で始めるスタイルもある。ITLABは、壁の一部がホワイトボードになっていて、突然ディスカッションになっても困らないんです。クラスタはいずれも小規模で、所属人数はだいたい5人前後。2人のクラスタもあります。このサイズ感だから深い議論ができるのだと思います。
ITLABの研究クラスタのゴールは、論文発表ではなく、設定した課題の解決であり、ビジョンの実現です。そこが、大学での研究とは大きく違う点です。短期的な研究トレンドの流行り廃りに合わせてテーマを変えるのではなく、課題が変わらないのなら、当初のビジョン通りクラスタは解決へ向けて研究を続行します。逆に世の中や事業の状況が変化してビジョンの意義が無くなってしまった場合には、ビジョンを適切に変更するか、クラスタを解散し新しいクラスタを立ち上げることになります。それくらい、ビジョンは絶対です。