事故ゼロは全ての人の願いです。ADAS(先進運転支援システム)の高度化と普及拡大が進んでおり、自動車それ自体の安全性は従来に比べて向上してきました。一方で、現在普及しているADASは自動運転レベルの定義ではレベル2に相当するものであり、車外状況の確認義務や運転責任はドライバにあります。にも関わらず、自動車が安全になった分、ドライバがADASを過信してスマートフォンを操作するなど、むしろ不安全な行動を行うことが懸念されています。
また、ADASとは別に、広い範囲への注意が不足する注意の偏り、思い込みによる「だろう運転」、長年の経験での癖、漫然運転など、様々な要因でドライバが事故につながる不安全な行動を取る問題も以前から存在します。
これらの不安全行動を防ぐため、ドライバの状況を把握するセンシングだけでなく、その結果に基づきドライバの行動を安全側に変容させるアクチュエーションの研究を行っています。具体的にはカメラベースのドライバモニタシステムの普及を想定し、ドライバの不安全行動の特定、車外状況とドライバの行動の組合せからドライバの内部状態推定、それらに基づくアドバイス等を行うシステムの研究を進めています。
ドライバの危険行動検知、車内外の情報統合によるドライバ状態推定、ドライブシーンの言語表現、LLMによる安全運転トレーニングなど、ドライバである「人」を中心とした車載インタフェースのあり方を研究していきます。特に重点的に取り組む研究は、ドライバの視線、車の操作、バイタルデータなどの多面的なセンシングと、ドライバーごとの性格、運転のくせ、反応速度などに個別最適化された介入による行動変容を実現することです。漫然運転や長年の悪習慣を検出した際には、ドライバーへの最も効果的なアプローチを探索するために心理学、生理学、社会学の知見を利用した統合的なアプローチも検討しています。
最終的な目標として、フィジカルAIや環境デザインを活用し、ドライバが意識的な努力を必要としない、自然かつ無意識レベルでの安全行動の定着を目指したいです。